Myrmephytum arfakianum 抽選販売について

はじめに

ずっと憧れだったアリ植物で現地まで見に行って紹介してきましたが、Myrmephytum arfakianum と Hydnophytum caminiferum は世界中で人気になり現地では乱獲される現状となってしまいました。
本当はもっと広く知って欲しい素晴らしい植物ですが、現地から簡単に入手出来てしまう以上、これ以上価値が高まり、高額になって乱獲が進むようなことにはしたくないので、価格が上がってしまうヤフオク等では販売せず、今後はイベント販売やこうした抽選販売のみにいたします。

M. arfakianum と H. caminiferum は自分が一番販売していきたかった植物ですが、現地環境を考えると非常に売りにくい植物となってしまい、現地株を売っているのを見ると悔しい気持ちになってしまいますが、大いに自分の所為ではあるので責任を持って行動していこうと決めました。
SNSに写真を投稿すると現地のバイヤーの宣材写真として無断で使われ、人気も高くなるのでそういったこともしなくなりました。現状まだまだ安定生産には程遠いですが農園では着実に準備が進んでいます。待てば必ず手に入る植物になるまで生産を頑張るので、他にも魅力的なアリ植物はたくさんありますし、入手できていない方々も栽培環境整えつつ待っていただけたら幸いです。



Myrmephytum arfakianum West Papua【S0319-08】 ¥50,000(税込)


鉢サイズ:6.4cm四角 / 対角8.3cm / 高7.5cm
代金:銀行振り込み
発送方法:クロネコヤマト
送料:¥940


こちらは農園の実生株です。

写真の2株のみ抽選販売。個体は選べません。同等株です。

野生採取株より育てやすいとは思いますが、そもそも標高1,800〜2,000m前後のやや高地性で暑さには弱い方です。
栽培難易度は中級ぐらいです。

価格は高額と思われるかもしれませんが生産に莫大な経費がかかっているのでこれでも利益はありません。
野生採取株を販売している方もいるのでそれに比べると圧倒的に小さく高額です。
野生採取株より育てやすいと言いましたがそれでも枯れるかもしれません。アリダマの栽培はまだ分かっていないことが多く不安定な植物です。
ただ栽培に関してのアドバイス等サポートはいたします。

また万が一商品到着後すぐに状態が悪くなるようなことがあれば補償いたします。

上記ご了承の上ご応募ください。



応募期間:2023年12月3日 〜 2023年12月8日 22:00

当選結果発表日時:2023年12月9日 13:00〜 インスタライブ内にて抽選
SNSアカウント
X(旧Twitter) @ito_akihiro_
Instagram @itome_sp_
のどちらかまでお名前、電話番号、『抽選応募参加希望』とDMをお願いします。

どちらもDMが送れない方は itome0731@hotmail.co.jp までメールをお願いいたします。
購入希望の方には抽選番号を返信いたしますので、その返信をもって応募完了となります。
当選した方にはこちらから連絡後、希望着日時等お伺いして発送いたします。
落選した方には返信は致しませんのでご了承ください。




それでは、なんだか仰々しくなってしまいましたが… ご希望の方はよろしくお願いいたします。

Order method (international shipping)

This is the first time we sell to overseas customers.

Please order after reading the following notes.



The sales list is displayed in Excel.
It will be sent to the email address provided.

Plants ship in June-July 2023

After confirming your order, we will contact you after confirming the inventory at the greenhouse.
Orders are on a first-come, first-served basis.
Your order will be confirmed after payment is completed.

Please pay within 3 days.
Payment methods are PayPal or Wise.
In the case of PayPal, an additional 4% of the total amount will be charged as a handling fee.

We only issue phytosanitary certificates.
If your country requires an import license, please email us.
We may need an import permit depending on the destination country. Please ask the plant inspection station in your country about import requirements prior to any purchases, because the requirements will vary depending on the plant and the destination.

There is no compensation for accidents during delivery.
There is no compensation even if it arrived in a bad condition.

We will look for the best shipping method, but I think it will be Fedex or EMS.

There are many things that are new to me and I am not used to it, so if you are worried about it, please do not place an order.


Thank you.

現地株や山採りについて

最近とても大株のレカノ(アリノスシダ)とかアリダマとかがよく出品されるようになりましたね。

ここではまず主にレカノとアリダマについて話します。(深夜テンションなので読みにくかったらすみません)
そもそも現地株( 野生株,山取り株,現地球 etc… 以下 現地株 )が難しいという話は前回のブログから。


私がどうしてもそういった株を売るのに抵抗があるのは大きく3つ理由があります。

まず第一に大株はリスクが高く管理しづらい。
第二に自生地の個体数が減りやすく乱獲に繋がりやすい。
第三に自分の目指す植物販売ではない、という理由です。

第一の理由

第一の理由ですが、まずアリダマに関してはほぼ間違いなく腐ると言っていいほど管理が難しいです。
大きい株であるほど重く、採取時と輸入時にダメージが大きく傷などから病気にかかりやくなります。
また、アリダマは株に見合った根が張らないと弱りやすいので数年に及ぶ長期間養生をしなければいけません。

大株ですと環境を用意するのも大変です。
温室などを持っていれば別ですが、室内管理の場合はどうしても空気が滞留する場所や見えづらく管理が行き届かない場所が増え、異常に気付きにくいです。
レカノの場合特大の大株になれば葉の長さは1mほどになります。環境が用意できなければどれだけ立派な根茎のものでも次第に萎縮して小さくなります。また、大株になれば黒い根茎の部分が多くなりますが、この部分は内部や根は生きていますが、表面は硬質化して細胞は生きていない状態です。この表面部分が管理によっては腐りやすくなります。

第二の理由

大株の需要が高くなれば現地の人は木ごとなぎ倒し採取して来ます。大株が残っていればその分種子や胞子などから増えていきますから、現地資源も比較的安定して維持できます。
塊根多肉のような非常に成長の遅い植物ならまだ理解できる (理解できるとは言ってない)んですが、アリダマレカノに関しては種子からでも胞子からでも10年も適切に栽培すれば相当な大株になります。草姿も崩れることなく現地株のように栽培できます。成長の比較的早い植物なのです。
同じように山採りの大株を入手しても相当良い環境で栽培できない限りあっと言う間に不格好になります。

山採りについて

さて、ここでそもそも山採りがどうかという問題も繋がってくるので、私の考えを書きます。
自分たちの界隈は市場にあまりない、珍しいものや、そもそも金銭的な価値が全くわからないような未知のものを扱うことが多いです。
現地の人が普段は見て何も思わないものを採取してきて異国の地で販売しています。そして非常に珍しいものであればかなりの高額な価格で販売します。
元々はその国のそこに住んでいる人の資源。それを搾取しているんですね。
自分のやっていることは正直エゴです。しかし私はその自然や人をリスペクトしていますし、それこそ現地でしか見られない大きな植物やそれを取り巻く自然がいつまでもそこに残っていて欲しいと思っています。
そのために何が出来るのかと考えました。



まず現地への還元。
今は行けてませんがコロナ禍になる前、年2回ほどでしたが私は現地へ行き現地の人たちと共に山へ入り植物を採取してました。植物を採取するハンターは山奥の人の仕事としてありました。現地の人やその村の人すべてというわけにはいかないけれど、少なくともその人たちにこちらの利益が入るような仕組みを考えたい。
そう思って、契約農場のような形にしたいと、必要な経費を払ったり、その人から植物を買うようにしました。
現地に行けていない今でも連絡を取り合い、植物の採取や管理方法を教えたり、農場建設の費用や、植物採取が上手いハンターをその現地チームの別地域のハンターに教えるための遠征費用を払ったりしています。

ある時、これはパプアニューギニアの友人と連絡取ってた時ですが、子供の学校の費用が足りないから前払いで助けてくれないかと来たので、すぐに支払いました。そうするとしばらくした後に支払った証拠の領収書とか送ってきたりしてとても喜んでいましたね (詐欺の可能性が非常に高いので普通は真似しないでください。信頼関係のある友人です)。

私はお人好しなので自分が好きになった植物に関わった人は少しでも幸せになってもらいたいと心から願っています。


そして自生地の保護。
山採りしてる限り自生地の環境は破壊されていると唱える人もいますが、本当にそうでしょうか。
壊滅的な自生地の破壊は人間による植物採取よりも圧倒的に開発によるものです。
インドネシアではパームヤシ農園にするために大規模に森林が伐採されていますが、その理由はもちろんそれが仕事になりお金になるからです。国は国民の為に政治をします。自然を守るために政治はしません。自然を守っているところはそれが観光になったり国のイメージを良くするため行っていたり、何かしら利益がないと自然は保護されないのが現状です。

その地域で見向きもされなかった植物たちを採取しそれに金銭的な価値をつければ、それがお金になり仕事になり、自生地の保護に繋がると思います。
ただその為には、採れるだけ採って売ってしまうようなやり方ではいつか破綻し、仕事として成り立たなくなってしまいます。
漁業なんかでもそうですよね。ルールを守って持続可能な仕事にしないといけません。
私と現在やり取りしてる人ももちろん同じ認識を持っていて、持続可能な植物採取・販売が出来るハンターを集めて一緒に長く仕事していこうと話しています。
(自生地保護の観点はあくまで植物採取に関しての可能性の話です。無闇な採取販売を推奨してる訳ではありませんので誤解なく…)

思うこと

近年では草せどりなんて言葉が出来るくらい、自生地から輸入し転がして販売するだけの人が増えてきました。
その人たちはまず間違いなく現地の人の未来のことなど考えていません。そしてその植物を趣味としている人たちの未来も考えていません。

正直、販売方法などは法に触れない限りモラル云々はありますがその人の自由です。
でもその植物に興味を持ったり好きになったなら、その植物を好きな人から買って欲しいです。きっと健全に長く楽しめるはずです。

私はアリ植物が大好きです。この植物を趣味として長く楽しく続けたいので、まだまだ未熟ですが色々と考えて農園を立ち上げ運営しています。この先もたくさんのことを経験して都度立ち止まって考えて行動していきます。
共感いただける方は是非とも応援よろしくお願いいたします。

余談(第三の理由)

…ここからは最近の植物販売についての考え。

ベアルートでの販売って、前のブログでも書いたように問題ない場合もあるけど、ほぼ全部が全部ってどうなんでしょうね。そんな販売してる人がすごく増えたと思います。
主にアリ植物のことを書いてきましたが、インドネシアでは今はビカクシダがすごい勢いで輸入されていますね。熱帯雨林の植物なんて変化が早くて山採りの状態なんか維持できないのに、何故あんなに売れるのか不思議です。
販売業者が煽っているのもあるのでしょうね。

そうした販売者はほとんどノークレームノーリターンという無責任さ。生き物だからと言いますが、生き物だからこそプロのこちらが確かな目と技術で安全にお届けしますよ、何かあったら対応しますよが普通じゃないでしょうか。購入者は養生や発根が目的になってしまっていますが、楽しいのは栽培なんじゃないでしょうか。
もちろん植物の楽しみ方は人それぞれなんですが、それって本当に楽しいのかなって、特に塊根系の発根チャレンジ動画とか見てると思います。

まぁしかし、現地株のような既に完成されたものを入手したいというのはすごく良くわかります。
正直栽培が楽しくて植物始める人より、見た目面白いから、お洒落だからで始める人の方が多いでしょう。自分もそうでした。結局ここでこうした事を書いても始めたての初心者の目には届かないしあまり響かないと思います。でもそうした人が先述の販売者から購入してしまうんですよね…。

自分も色々考えて、やってることが正しいのかわからなくなってきました。
本当だったら特徴ある立派な株を販売したい。でもどうしても高額になってしまうし、中長期的な目で種親となる親株も確保したいし、…でもお金ないし…。
アリ植物が好きすぎて、興味持ってもらった人に失敗して欲しくないと思いすぎるあまり、他の人の入手する機会を減らしてしまっているんだろうなと。だからこそ無養生でも現地株の販売してる人は買いたい人が買うからいいんだと思って(言い聞かせて)ます。
過去にアリ植物枯らしすぎてトラウマになってしまってるのが原因なのでしょう…。あまり良くないですね。

…あとちょっと思ってることを書かせていただくと、悔しいのですね。どうやったら普及できるだろうと必死に考えて大金を借金して、それでもまだ利益になっていないのに自分がやらないでいる方法で利益になっているのがたまらなく悔しい。
その方法をとって苦しんでるのは自分なので、別に誰のせいという訳でもないのですが…。なんか本当に不器用で泣けてきます笑
同じことは出来るんですよ。ただただお金になるやり方。でもそれって自分のやりたいことじゃない。そんなことは誰にも言わず隠れても出来ません。

なんだか愚痴みたいになってすみません。
塊根多肉でよくあった大量の現地株ベアルート販売、いよいよ熱帯植物の方まで来て、農場立ち上げで苦しいのと合わせて色々と悩んでしまって。
農場ではそうした採取植物の中でも癖のあるものを育てやすくして販売するというスタイルなので、あまりに真逆の販売が多くて、大量に売れてて、自分がやってることって求められていないんじゃないかと思ってしまって。

まぁしかし正しさというか自分がどうしたいかに尽きますよね。事業って難しいですよね。理想と現実のギャップに毎日疲れてます。
でも頑張ります。



長くなりましたがここまで読んでいただいた方、ありがとうございます。
そもそも育て方とか基本的な情報発信しろよという感じなので、引き続き頑張ります。

アリ植物専門の農場を作った理由

久々の投稿ですみません…。
農場の立ち上げ、やっぱりすごく大変で、毎日休みなく仕事しておりますがそれでも間に合わないぐらいで…。

しかし色々な人に助けてもらいながらなんとかやっておりますのでとりあえずご安心ください。

さて、最近やっと、農場立ち上げの活動などもあって、アリ植物が以前より多くの人に認知されるようになり、実際に育ててみたいと購入されることも多くなったように感じます。
それに伴い、販売の方も当農園以外のお店でも、比較的珍しいアリ植物を取り扱い販売しているところを多く見かけます。
こうした動きは嬉しいことではあるのですが、一点とても気がかりなことがあります。

それは現地株( 野生株,山取り株,現地球 etc… 以下 現地株 )の販売です。
現地株について、自然がどうとかそういう話はまた別の機会に話すとして( 現在も考えを持っています )、ここではアリ植物の現地株がどういったものなのかをお話しします。

農場を立ち上げた経緯

え?なんで経緯?と思うかもしれませんが、そもそも私が伊藤蟻植物農園を立ち上げた理由が現地株の栽培の難しさからです。
アリ植物の現地株と言っても、主に手に入るのはアリダマとアリノスシダです。
私がアリ植物を初めて知ったのは11年前ぐらい。当時は全くと言って良いほど売っていなくて、海外サイトで販売してるのを見つけ、翌年個人輸入して購入したのが最初でした。
栽培情報もほとんどなく、海外の掲示板か、当時国内で唯一と言っていいほどマニアックなアリ植物を販売していた方などのブログでした。
それでも何が正しいのかみんな手探り状態という感じで、正しいと思われる方法はよくわかりませんでした。

そして、全く流通がないので、珍しいものと言ったら大体が現地株になるのです。
アリ植物の魅力にハマり、もうとにかく手に入れて育ててみたいと次から次へと買いましたが、次から次へと枯れました…。どういった性質のものかもわからないし、滅多に手に入るものでもないので、一体何で失敗したのかもよくわかりませんでした。
一つ一つが絶対に枯らしてはいけない貴重な株で、試す、なんてことは出来なかったんですね。
そんなこんなで、ちょうど今ぐらいでアリ植物を栽培し始めて10年が経つのですが、当初3年ぐらいの株は、栽培品も現地株も一つも残っていません。
一番古くて7年前の自分で撒いた実生株です。現地株に関しては、この10年で本当に多くの株を購入し、多くのお金を使いましたが、残っている株は数えるほどです。
ここで勘違いして欲しくないのは、販売業者は経験から比較的これなら育つ可能性が高いだろうという株を販売していたことと、私が業者として仕入れたり採取したりした株ではなく、純粋に趣味家として購入した株を、大事に丁寧に管理、栽培してほとんど残らなかったということです。

…でも結局、それって管理が下手だっただけじゃないの?
と思うかもしれません。しかし、これは趣味家である私だけではなく、採取して来た人も、プロの生産者も、腕のある趣味家も一様に「アリ植物は腐る」という認識となっていました。
疲弊しやめてしまった人もたくさんいると思います。


しかし、いくら腐るからと言っても、なんとかして育てたいと強く思い、とにかく試せることはなんでも試したし、数少ないアリ植物趣味家に話を聞いたりして絶やさないように努力しました。
増殖方法や養生の仕方を独学ながら学んでいき、その結果、アリノスシダはある程度問題なく養生できるようになり、アリダマは実生株は現地株と違い圧倒的に育てやすく、腐りにくいことや、現地株でも活着して根が発達していれば比較的栽培がしやすいことに気付きました。
それからは、活着株は何がなんでも購入し、未養生アリダマ現地株はまず枯れて当たり前のものだと認識し、大きめの株で種子が取れそうな株を、その種子目当てに購入するようになりました。その種子から育った株が、今も育っています。


その後、私が独立する2、3年前ぐらいから、オランダから大量の数種のアリダマ実生株が輸入され、ホームセンターや園芸店でお手頃な価格で手に入るようになりました。
SNSやネット記事などでアリ植物の情報が発信され始めたことも重なり、この頃からアリ植物の認知度が広まってきたと感じました。
しかしこの輸入苗、別にアリ植物専門の農場があるわけでもなく、観葉植物の農場が商品として一時的に生産されただけに過ぎず、しばらくしたら生産をやめるという話を聞きました。

折角ある程度広まったアリ植物をここで一般市場から消えてしまうのは勿体無いという思いと、こんなにも面白い魅力に溢れた植物をもっとたくさんの人に知って育ててもらいたいという思い、そして今まで曲がりなりにも培ってきた技術と知識で、アリ植物を園芸の一ジャンルとして確立させたいという思い、そして何より、自分が失敗してきた数々の経験を興味を持ってもらった人に繰り返して欲しくないという思いから、国内で生産流通させる農場を作りたいと、「伊藤蟻植物農園」をつくることに決めました。

私は趣味家として誰よりも多くのアリ植物を購入し育てた経験があると思っていますし、業者としても誰よりも多くのことを試し実践してきた経験があると思っています。
栽培環境は部屋、ベランダ、地下室、温室。最終的に数千万資金調達し、最新機器をなるべく導入した温室を建てて膨大な数のアリ植物を触って育ててわかったことは、やはりアリダマの現地株の養生は難しすぎるということです。


栽培技術、経験をある程度積んだ今でも痛感します。
「こんなもの広がるわけがないし続くはずがない…。」
来る日も来る日もアリダマ現地株をチェックして腐った株を捨て、輸入の度にたくさんの傷んだアリ植物を見る日々。大好きな植物が腐り、枯れてしまうのは今でも全く慣れません。毎日毎日ストレスです。
でも、お客さんの元で枯れるはずだった株がここで枯れて良かったなと安心もします。
現在も膨大な数の傷んだ養生中のアリ植物現地株が農場にあります。

趣味の延長で植物を販売していた時期や、独立した時などは余裕がなく、そうした不安のある品質のものを売っていた時がありました。
アリ植物を多く枯らした経験から、この辛い体験をなるべくならして欲しくないと思っていますし、これは私自身の性格なのですが、何か起こると自分が悪いと考えてしまう癖があるので、極力これなら安心して育てられるだろうと自分で納得した質の植物を販売したいという想いがあります。
輸入時は見た目が良く、このまま販売すれば利益になるような株もダメージが出切るまで養生しているので、農場立ち上げたばかりの現在では利益が少なく厳しいです。
ですが、なんとか資金が尽きないギリギリまでは自分がやろうとしたことを貫き守りたいと思っています。

農園でのアリ植物現地株の扱い方

ちなみに、当農園ではアリダマ現地株はもちろん販売用もあるのですが、多くが種取り用の親株としてか、植物園での展示用など、生産普及の為に栽培しているものです。
別にひとりで溜め込んで楽しんでいるとか、自慢しているとかそういうものではないんですよ…。大株なんていつ枯れるかもわからない爆弾みたいなものです。
私もアリ植物栽培経験はまだまだ浅く、播種から5年を越えるようなある程度見栄えのする実生株も少ないです。そのため現地株での紹介が多くなっています。正直、こういった現地株での紹介もあまり良くないことはわかっています。しかしどうか憧れないで欲しいです。
少なくともアリダマは種類にはよりますが比較的成長が早く、実生株でも適切な環境を作れば立派な大株にするのに何十年とかかることはありませんし、現地株と同様な姿に育てることが出来ます。
現地株に関しては価格も比較的高額に設定しております。その理由は労力というところもあるのですが、栽培が難しく不安定な為、始めたばかりの人が手を出しにくい価格にしてあるというのもあります。

懸念していること

ここからは懸念していることです。
現在アリ植物は普及種も少なく、そのほとんどが市場には流通していない珍しいものです。そういったものはどこかの農園で作っているわけでもないので、自然から採取してきたものが多いです。そして徐々に高まる需要と、インドネシアが海外に積極的に植物の輸出をしだしたことにより、現地から多くのアリ植物が輸入されるようになりました。
もちろん私も多くのアリ植物を輸入していますが、輸入したアリ植物をそのまま販売する業者も多くなりました。

既に腐っているような株や、育つ可能性が低い株など、はっきり言って良くない状態の植物が多いです。
これはどの植物でも同じだと思いますが、発根養生管理などよりも、現地での採取、管理、輸送方法によりその株が生きるか死ぬかがほぼ決まってしまいます。未養生の植物を販売するなら尚更、販売業者側でしっかり管理し判断しなければいけないと思います。
私が過去購入したきた国内の販売業者の方は自ら現地へ行き、採取し大切に持ち帰った株を販売しておりましたがそれでもアリ植物は難しかったのです。

現地株の未養生の植物には、問題なく育つ株ももちろんありますが、アリ植物に関しては違います。未養生でも最低限ある処理をするなどありますが、私が見る限りでは現在未養生の現地株を販売している業者はアリ植物の知識が全くない人です。植物の知識も少ないと思います。
今、アリ植物に興味を持って栽培してみたいと思った人たちは、何も分からず買うでしょう。私が経験してきた辛い思いをして欲しくないと立ち上げた農場なのに、このままではいけないと思ったので、アリ植物の中でも主にアリダマやアリノスシダの現地株の栽培に関して、現地で採取もしてきた自分なりの見解や注意することを、次回でも書いていきます。

一年を振り返って

もう一年が終わるんですか…信じられない早さで過ぎ去っていってしまいました…。
Twitterとかちょっと遡って見てみると去年の10月ごろに温室建てるのは4、5年後かなとか言ってたんですよね。まさか翌年建てるとは笑


ここ数年は一年ごとに激動って感じですが今年は特に激しかったです。
真剣に人生や経営について考えたら、今動くしかないな、っとなって怒涛のスピードで動いてきました。『あれ、このままじゃ来年からの未来が見えない…?潰れる…?』となったんですね。
コロナは一向に落ち着かず海外に行けないし、行けるようになったとしてそれはいつになるのか?そうなると仕入れがなかなか出来ない?今までの増殖方法、環境でやっていけるのか?とにかく不安になりましたが潰れるわけにはいかないので、じゃあもう今考え得る最高の環境をどんな手を使ってでも作り上げるしかない!となりました。
まず融資受けたいけどどうすればいいのか聞きにいって、ハウスとか諸々の設備がそもそもいくらかかるのか見積もり取り始めて…と、なんか必死に動いてたらなんとなく形になってきて今に至りました。(超ざっくり)


たくさん勉強もしたし経験もした一年でもありましたね。特に融資とか。
まだブームにもなっていない植物を普及するところから始めて経営が成り立つようにしてさらに売り上げを伸ばしていく。ざっくり言うと簡単ですが、これをしっかりエビデンスもつけて数字にして組み立てていくんです。自分でなんとなく自信があって成功するんだ〜みたいなのを、全く植物知らない人に説明できるように事業計画を作り上げていく。これをひたすらやってましたね…。


経営の方だけじゃなく普及活動の植物園展示協力も今年は3箇所やりました。
意外?に大変なんですよね…。大事にしてる植物を遠方まで運んで展示するのって、体力的にも精神的にも結構疲れます。やりたくてやってるし、頼んでやらせてもらってたりするんですけど、複雑ですね。
でもこういう展示って、お金にはならないからこそ、何か自分が大事にしてる本質的な部分と向き合えると言うかなんと言うか…。まだあまり言葉にできないな笑
植物園の方達とも協力しあって話せるのはとても良い機会です。当たり前ですがみんな植物の魅力をどうにか伝えるのに必死に頑張っている。自分は主に販売が主だけど、どうしたらわかりやすく魅力が伝わるのかとても参考になり勉強になっています。
来年は一年展示協力はお休みしますが、またパワーアップして企画しますので楽しみにしていてください。


新しいアリ植物の導入は難しいなと思ってたんですが、最後の方はなんとかアリダマとかも色々と導入出来ました。結構珍しい面白いのが入ってきたので、展示とかでお見せできるといいですね。しかし、やっぱりアリダマ野生株って高確率で死ぬんですね〜…。なんか少し忘れかけてましたこの辛さ。この辛さを味わせないために生産農場を立ち上げたんでした。人柱となって生産頑張ります…。


イベントも後半は徐々に復活してきましたね。
やっぱりイベントは楽しい!直接顔見ながら話せるのってやっぱり気持ちがいいですね。植物も写真より実物見ると色々欲しくなっちゃいます。自分が扱ってるのみたいな少し癖のあるものは直接話さないとニュアンスが伝わりづらかったりするのでありがたいですね。ただやっぱり遠方の人は難しかったりするし、折角コロナ禍でリモート文化も広まったのだから利用して何かやってみたいなとも考えてます。


そして何より初めてのクラウドファンディング!
想像以上に色々な方々にご支援いただけて本当に嬉しかったです。
大きな融資が通った段階でしたが、資金面でまだ余裕がなかったり、人手が無くて業務で疲労していたりで精神的にも肉体的にも疲弊してしまっていたので、皆様のコメントでとても元気付けられました。あのページのコメントは一生の宝物です。
まだ個別にお礼出来てなかったりリターンが遅れてしまって申し訳ないです…。


あと大きなことと言えば日本蟻植物協会を立ち上げちゃいました。やるからにはしっかりやりたいなと思ったのと、植物園との繋がりで何か出来ないかなと考えていたので、一般社団法人として設立しました。
普及活動はやっぱり重要で力を入れたいと言うことなんですが、趣味家同士の繋がりも作りたいなと。やっぱりこういう趣味って、好きな人同士で語り合うのも楽しみの一つだと思うんですよね。イベントとかまさにそうだと思います。
栽培も人それぞれ色々あって、正直こちらの農場での環境って、生産スピードを考えて莫大な金額投資して作っているので参考にならない部分も多いと思うんですよね。あと趣味家の人って扱いが丁寧で栽培上手い人が多いので、自分も参考にさせてもらいたいなと思ったり笑
あとはあれですね、こうしてHPも作ったのに全然情報発信が出来ていないのでやるしかない環境を作りたかったと言うのもあります笑
…とか言いつつまだ協会HPが出来ておらず募集もまだなんですが……もう少しお待ちください…すみません……。




うーんなんだろう、全然書き足りないけどまとまらないな笑

とにかく人に助けられた一年だったなと感じます。
ハウス作りとかもたくさんの人に聞いてアドバイスもらったりしましたし、融資に関しては農協や銀行の担当の人にとても助けられましたし、各種申請や就農計画書などでは役所の人にも協力いただいたり、農地探しでは農家の人や不動産センターの人に探してもらったり、経営に関しては税理士の人に指導してまとめてもらったり、家族や知人やお客さんには資金面で助けてもらったり……もう色々とキリがないぐらい助けてもらいました。
間違いなく人生で一番人に助けてもらった一年でした。

来年もまたさらに多くの人に助けられそうな予感です。
いよいよ2月ごろには新温室が稼働予定。アリ植物園芸の幕開け!といきたいところです!
今ちょっとした執筆のために改めてアリ植物の勉強してるんですが、やっぱりめちゃくちゃ面白いんですよねぇ。自分の人生をかけてまで追求していきたいと思える面白さがアリ植物にはあります。なんとか皆さんに伝えられるよう頑張らねばと再度思いました。


なんだかだらだらと書いてしまってすみません笑

今年一年、応援いただきましてありがとうございました。
また来年もよろしくお願い致します。


クラウドファンディングありがとうございました!

クラウドファンディングが無事終わりまして、結果、目標金額の1,000,000を大きく上回り3,017,000の支援が集まりました!
改めまして本当に本当にありがとうございました!

気付けばこちらにクラウドファンディング開始のことを書くのも忘れていました…。
ただ、色々な想いはクラファンのページに集約して書けたと思うのでご支援いただいた方々には伝わったかと思います。


理想とする目標は高く、やりたいことやこだわりたいことがたくさんあるのですが、現在はやることが多くて完全にキャパオーバーとなっているのでなんとかしなきゃです…。
つい最近まで色々なことが重なって心労が半端なく、ついつい周りやSNSで弱音を吐いてしまっておりましたが、今回のクラファンでの皆様のご支援やコメントにとても勇気づけられ持ち直すことができました。ありがとうございます。

まだ知名度も低いアリ植物というものに興味を持っていただき、ここまで支援額が集まったのは自信にも繋がりましたし、本当に嬉しく思います。


園芸としてのアリ植物はここから始まります。
まずは原種をより多く集め、生態も含め魅力を紹介、生産普及させ、並行して栽培下で交配や変異など選抜し栽培品種を作出する。
特に交配など栽培品種などはほとんどなく、やれることがとても多く楽しみです。

また、アリ植物の代表格、アリダマの種類が豊富なパプアからの輸入ルートもある程度確立出来たので今後より面白いものを紹介出来ると思います。
温室建設の計画に伴い、生産するためのアリ植物のより多くの種の導入は一つ課題となっていましたが少しクリア出来そうです。


今後の課題は温室の栽培環境の調整と、何より経営です。
光熱費一年間分はおおよそ算出して融資申請を出しているのでそこでしっかり見極めて調整するのと、栽培環境も一年間でデータをとって効率よく改善していきます。
栽培環境が変わり、経営規模が大きくなった時に、どのくらいの株を残しておけばどのくらいのスピードで生産できるのか。このあたりが未知数で一番重要なポイントなのですが、これも1年間である程度見極めなければいけません。
ある程度わかるだけでもだいぶ今後の計画が立てやすく、現状では全く掴めずになるべく多く残しておかなければならないので、今が一番厳しいですね。あと場所が無いし……本当に温室稼働が待ち遠しいです笑

温室建設は計画より遅れてしまっていますがそれ以外は問題なく進んでおります。


今週から基礎工事が始まり、徐々に形となっていくのはとても興奮しますね!
随時更新していきますので、その興奮を共有出来たらと思います。





近況報告

今日は文章だけですが考えてることをつらつら書こうかなと…



大体Twitterで近況報告しているのでわかってる方多数と思いますが、昨年末ごろやっと新規就農いたしまして、現在はハウス建設へ向けて日々動き回っております。

わかってましたがやっぱり大変です。
それでももう農地も決まり、あとは融資だけという感じ。



現在ハウスを間借りしているのですが、それが始まったのが一昨年の11月ごろ。
作物が違うのでハウスの環境を知りそれを整えるのに現在も必死になってます。やはり熱帯植物が栽培できるハウスって特殊というか、高価になります。

今はアーチ型ハウスでやっているのですが、多分軒高は2m。大型換気扇があるので中の空気は一気によく抜けます。暑くなればこの換気扇が回るのですが、結構な風が通るのでドライヤーで乾かされているような感じですかね。
冬場はほぼ回らないですが春や秋は日中でも回るので結構乾燥します。移動した当初、ハウス内なので大丈夫だろうと思っていた湿度がかなり足りなくなっていたのですね。これに早く気付けず、この前にスラウェシ島から持ち帰ったアリダマは養生が出来ずにほとんど枯れてしまいました…。
去年はこの乾燥と暑さを防ぐために市販のガーデンミストを多めにつけてなんとか乗り切りました。このガーデンミストを使った暑さ対策はベランダでパイプハウスで栽培していた時に使ってある程度うまくいったものでした。しかしこれが失敗だった…。
それは水です。家で使ってた時は水道水なのですが、農場では農業用水。池の溜まった水を引いてきているのですが、その水の中にはたくさんの細菌や藻があります。それを日中絶え間なく噴霧していた&高温によるストレスにより細菌性の病気が大量発生。弱いアリダマから徐々に、たくさん枯れてしまいました。

冬場は何もないのかというとそうでもない。
借りているハウスは隣に建物が建ってしまって日照が少なくなってしまったので使わなくなった場所なので、日照がとにかく少ない。
一番日照が少ない時期は昼12時〜16時の4時間しか直射が当たりません。
そうなると朝温度が上がるのが遅く、暖房費も嵩むし、植物もほとんど成長しません。秋口に輸入した植物はうまく育たず、多くが枯れました。



…とまぁこんな感じで失敗続きでだいぶ痛手です…。他にも地下に移動させたアリダマ実生株が一時期空気の悪さでこちらも多くが枯れたり成長が鈍ったりと、まぁとにかく環境が悪い。うちで扱うものは比較的中型ぐらいの植物が多いですし、ガラスケースでやれるようなものは少ないんですね。なのでもう普通にラン屋さんみたいな温室がいるわけです。

一括りにハウスと言えど、構造によって環境は様々です。
熱帯植物に適した環境は高湿度、冬場の高温、ここからさらにジメジメしたものだと、水質と、風の弱さです。特に風は厄介です。
先ほど言った自分が借りているような換気扇で風を抜くようなタイプだと、湿度変化が大きくストレスになり、そもそも弱いものだと乾燥でダメになってしまいます。
これを防ぐにはなるべく高温の空気を上に逃すべくハウスに高さを持たせて、屋根の窓を開閉させて熱を逃すような構造が必要になります。
観葉、ラン屋さんなんかでよく見る屋根型の大きなハウスですね。やっぱりあれが理想だと思います。…でも高いんですよ。大体それの相場がビニールで坪5万、ガラスで坪10万ぐらいです。じゃあ安くても100坪500万ぐらいかーと思ってしまいますよね。
これはほんとにハウスだけなので、ここからさらにカーテン軸、内張ビニール、遮光ネット、植物棚、暖房機器などかかってきます。
しかも自分は熱帯植物でも高山性のものもあるので環境を変えたりしたいんですよね。なんなら実生株も…とか今後の計画考えると色々と現実的じゃないなと。事業計画も含めてほんとかなり考えてたくさんの会社に見積もりとって打ち合わせして、ようやく新ハウス建設図も出来上がってきました。
新ハウスの詳細スペックはまた別記事で書こうと思います。
ちなみに欲を言えば暖房も温湯暖房が最高ですね。温風暖房機だと風が結構強いので直撃するところだとそれこそドライヤーみたいになります。でも高いのでその他の工夫で乗り切ります…。



そんなこんなことあってのハウス建設なんですよね。
このままじゃ事業が危ういです。一刻も早くハウスを建設し引っ越したい。
マニア系というか、こういう趣味の比較的高価格帯の植物で新規就農した人って最近いるんですかね。新規就農のこともかなり詳しくなったのでこれも別記事で近いうちに書き残しておきたいと思います。
観葉ともランとも環境が違うので、一番参考になったのが食虫植物農家と植物園でしたね。いやぁ特殊でお金がかかる…。ここに入ってないんですが農地も買わなきゃいけないんですよね。借りてもいいんですが、色々問題があるので買います。まぁ一生やりますし、出来ることなら一代で終わらせたくないし。

どんな環境が最速でよく育ち生産出来るのか。イメージは結構出来てるんです。それが実現出来ればより良い苗を提供出来るはず。
特にアリダマ実生株は小さいままの苗での販売で申し訳ないです。これじゃあ魅力が伝わらないのはわかってはいるのですが今はこれが精一杯…。今買って頂いてる方達には本当に感謝しています。

今回の融資、まだまだ実績が足りないので頑張っても望む額はギリギリ借りられなさそうです。足りない額はクラウドファンディングを利用したいなと考えていますのでその時はまた応援よろしくお願い致します。





……あれ?こんな感じの終わりでいいのか?笑
話したいこと山盛りで書いてたらだいぶ端折ってしまいました…
引き続き文章だけの投稿少し続くと思います笑



アリ植物とは

アリ植物とはアリと共生関係にある植物。
じゃあどう共生関係にあるのか、定義はなんなのかという話。

アリ植物の3つの関係

エライオソーム

まず1つ目のエライオソーム(種枕)。植物の種子についている付着物で、アリが好む餌となっている。アリは餌として巣に持ち帰り、植物はアリによって種子を遠くまで拡散させる仕組み。
この仕組みを持つ植物は約11000種。 片利共生など日和見的な相互作用。

花外蜜腺

2つ目は花外蜜腺。英語ではextrafloral nectar, 略してEFN と表記されることが多い。
言葉からわかる通り花の蜜ではない、その他の葉などの箇所から分泌される蜜。
真珠体と呼ばれるものやアリアカシアの葉に付くベルティアン体も広義で花外蜜腺と言っていいと思う。この蜜を利用してアリなどに植物体を守らせるなどしている。
この仕組みを持つ植物は約4000種。 片利共生など日和見的な相互作用。

ドマティア

3つ目はドマティア。ダニ室と呼ばれるものと同じで、植物自体が空洞を持つ箇所を作り、その中にアリなどを住まわせる。アリ専用のダニ室と言う意味でMyrmecodomatium とも呼ばれる。
植物は住み家を提供し、アリは住み家を守るためにも植物体を守る。さらに排泄物や死骸などを栄養として吸収する機能を持つものや、その植物体でしか巣を作らないなど、強い共生関係を持つものもある。
この仕組みを持つ植物は約700種。 相利共生など義務的な相互作用。

それぞれ簡単に説明するとこんな感じ。
さて、ここで改めてアリ植物とは、と考えると、アリと共生関係にある植物はとても多いことがわかると思う。

その中でもドマティアを持つ植物は熱帯地域にのみ分布しており、アリとの相互関係もより義務的な共生関係となっている。
「アリ植物」と言う言葉の定義は曖昧ではあるが、園芸においてその造形を楽しむと言うことであればドマティアを持つ植物のことをアリ植物と呼ぶべきなのではないかと思う。
Guillaume Chomicki氏の『Phylogenetics and molecular clocks reveal the repeated evolution of ant‐plants after the late Miocene in Africa and the early Miocene in Australasia and the Neotropics』によるとこのMyrmecodomatiumを持つ植物は約700種(約160属50科)ほどあるとされているが、調査を続ければ約1140種あるとも言われている。

アリの多様化の背景には植物の多様化がある。
Veronika E. Mayer氏らの『Current issues in the evolutionary ecology of ant–plant symbioses』 によると、アリは白亜紀後期から多様化したと考えられており、植物は白亜紀初期ごろから花を咲かせる植物(アンギオスペルマム)が多様化し急速に広がった。この花を咲かせる植物(アンギオスペルマム)の拡大により草食性昆虫の増加や植物上の食物資源がより豊富となり、より多くのアリを植物に引きつけ、アリと植物の相互作用の進化の機会を増やしたと考えられている。その結果、アリは植物に集まる草食昆虫を餌として狩りをすると、結果植物の食害は少なくなり、それに目をつけた植物がアリを利用し体を守るように進化したり、種子散布のために種子に絵餌をつけ運ばせたりなど、多くの相互作用を生み出すことになったという。



また、南米と東南アジアのアリと植物の関係には違いがあったりする。
そのあたりなどなど書き始めるとキリがないぐらい膨大なので少しずつ書いていくようにします。

ちょっと脱線したかもしれないですが、アリとの共生関係が強い順としては
エライオソーム < 花外蜜腺 < ドマティア の順です。

花外蜜腺はアリだけと言う訳でもないし、複雑な相利共生関係があるものもあるけど無いものも多いです。
また、南米のチランジアの一部の葉の間にアリが巣を作るのでアリ植物と言われたりしていて、確かに栄養を吸収出来るような構造、生態があるものもあるようですが全てでは無いと思います。
アリと植物の関係はまだまだ詳しく調べられていないものが多く、これら全てを『アリ植物』と呼ぶのは疑問です。そもそも、アリ植物と聞いて思い浮かぶのは食虫植物のようなわかりやすい変わった器官を持った変わった姿の植物と言うイメージになると思うので、混乱しないようにするならば園芸におけるアリ植物とはドマティアを持った植物とすれば良いのかなと思います。

最近ではMonolena が海外でアリ植物とされて販売されて日本にも入って来ていますが、関係について研究されたようなソースがなく、ただ真珠体が出来るからそう言われているような気がします。もちろんその中でも関係性がある種はあるのかもしれないけどわからないですね。

色々調べるとわかるのですが、アリに関わらず植物は多くの生き物と複雑な関係を持ち進化しています。自分はわかりやすく「アリ植物好き」として活動していますが、生物多様性がわかりやすく面白く学べる変わった植物全般が好きです。


最近園芸において『アリ植物』がただの商売の売り文句になっているような気がして気になったので簡単ですが少し書いてみました。
日本語で説明されたネットの記事もなく、調べるのが難しいので言ったもの勝ちにならないように、せめて海外の研究者の論文を自分も勉強がてらここに書いていけたら良いなと思います。

アリ植物展示について御礼と感想

咲くやこの花館と東山植物園でのアリ植物の展示が終了いたしました。
このコロナ禍で、来て欲しくても宣伝していいものかどうかとか色々な想いでいましたが、結果多くの人にとまではいかずとも最低限魅力が伝わる展示ができたのではないかと思います。ご来場いただいた方々本当にありがとうございました。

植物園側から声をかけられたわけでは無いので、地道に色々な植物園にコンタクトを取り、アリ植物のプレゼンをしていきました笑
話し始めると皆さん興味深く話を聞いてくれたし、色々な方を紹介してくれたり、面白い良い展示が出来るよう協力してくれて本当に感謝感謝です。
結果多くの人に協力いただいて開催となりました。展示に際してご協力いただいた方々、ありがとうございました。

初めての植物園での展示協力という形でしたが、短い時間の中でやりとりして調整していただいてとても助かり勉強にもなりました。
今後も引き続き植物園での展示協力等をしていきます。その中で植物園に少しでも多くのアリ植物を提供していってアリ植物展が夏の食虫植物展と同じように、全国で当たり前に毎年開催されるようにしていきたいです。
現状では自分のコレクションを運んで持っていくしかないのですが、ほぼほぼ一点しかなく、尚且つ展示・移動によるダメージもあるので悩ましいのですが、ここはやはりリスクを承知で少しでも多くの方々に魅力や情報を伝えていくべきだなと感じています。

アリ植物はまだまだ流通が少なく、栽培方法もまだよくわからないものがほとんど。しかし最近では自分を通してメディアに紹介される機会も多くなっているし、より認知度が上がる前に少しでも多くの情報を発信し、物を提供し、これから興味を持ってくれる人のために基盤をなんとか作っていきたいです。
今のところ普及も生産も情報発信もほぼ自分一人でやっているようなものなのでなかなか時間かかってしまうけど、ここまできたらなんとか頑張りたいです。ただ少し弱音を吐くと、ここのところのコロナ禍と展示と農場立ち上げの設備投資諸々でお金がなくて負のスパイラルに陥りかけていてどうしようかなっていう感じ。
出来ればバイトとか雇えたら生産量も増えるんでしょうけど、モノも輸入しづらいし、売れば増殖かけれるものが減るし、高額なもの欲しがる趣味家もまだ少ないし…
まぁそんな感じで若干落ちてはいるんですが考えてないわけではないので未来の自分がなんとかしてくれるでしょう。




……ちょっとネガティブになってすみません笑


今回の展示で色々嬉しいことや気付いたことが多くありました。
咲くやこの花館での展示は食虫植物展の中での特別展示でしたが、その圧倒的なまでの食虫人気には驚きました。
興味を持つ部分ってどこなんだろうと思って来場者の反応を見てみると、実際に虫を食べている動画や痕跡かなと感じました。アリ植物に置き換えるとアリが住んでいる様子とかですね。確かにこの部分ってあんまり紹介できていない気がするなと。
逆にアリ植物の方で言うと今回ミルメコディアの塊茎の断面を見せる展示をしましたが、それが一番よく食いついて見てくれていましたね。
自分も色々紹介してきたつもりでしたが、今回の展示の反省を生かして、より面白くわかりやすい展示もできるよう頑張りたいなと思いました。
東山植物園での展示は愛知県の再びの緊急事態宣言と猛暑とあり、来場者は少なめでしたが、植物園の常連のお客さんからはこれからも引き続き展示してほしいと言う声を多くいただきました。

どちらの展示でも、これだけの種類を初めて見たとか、そもそもこんな植物があるなんて知らなかった、面白いと言う声を多くいただきました。即売会では子供の実験用に苗を買って行ったり。
こういうことって結局消耗品みたいになってしまうので嫌がる人が多いと思うんですが、自分は嬉しかったですね。多く生産された普及種などは手の届きやすい価格で気軽に買えて、色々興味を持ってもらうきっかけになってもらいたい。食虫植物が今これだけ有名なのもホームセンターなどで毎夏出てくるようになった安価な生産品の影響が大きいでしょう。
アリ植物が安定してそうなるにはどれだけかかるかわからないですが、将来的にそうなればいいなと思います。


このHPも情報発信の場として作ったのですが色々遅れてて申し訳ないです。
まだバタバタですがこれからも長い目で見守っていただけたらと思います。

東北イベント

仙台「花と緑のココロ博」ありがとうございました!

・・・と事後報告ですみません!
こちらでも告知すべきだったんですが何だかずっとバタバタしていて更新忘れていました・・・。

BORDERBREAK ゾーン(雨林園藝 /つるかめ山草園/ISHIIPLANTSNURSERY/necomoss)
にて出店させていただき、今回のイベントでは「アリ植物の魅力と育て方」と題してミニセミナーをやらせていただきました。
セミナーの準備をしていると、そもそもアリ植物って何だ?っていう基本的なこととか、わかりやすく育て方って?とか、今まで放置気味だったことを整理する良い機会になってとても良かったです。

アリ植物って色々な共生関係で存在していて、園芸でいう所謂アリ植物って特に定義がないんですよね。食虫なんかは消化酵素があるかどうかとかだった気がする。
ここの定義、ここで書いたら長くなるからちょっと飛ばしますけど・・・

一般の方も多いので入手しやすいアリ植物とかまとめて見たけどもう全然無い笑
あっても全て東南アジアのものばかり!世界中にあるのに・・・やっぱりまだまだですね。少なすぎて本当に驚きました。
海外業者含めて購入できるものならまぁまぁありますけどね。それでも少ないかなぁ。



そして今回東北ということで最初から売り上げ的には厳しいことを覚悟して行きましたがやっぱり厳しかった・・・!BORDERBREAKゾーン全体でもなかなか苦戦していたかな。
それでもこれからアリ植物を始めたいという方が多くいてとても嬉しかったですね。
普及種すらもあまり出回っていないようで。




今回、セミナー、販売とやって痛感したのは普及種の少なさ。始めにくさ。


感じてはいたけど、もっと気軽に少し集めて楽しめるものがもう少し欲しいですね。
今年は更なるアリ植物の探究と共に普及種の充実も頑張りたいなぁと感じました。




しかしセミナーの準備をしていてもどうしてもアリダマに話が寄ってしまう・・・
現在5属約150種ほどありますが、そのうち約50種ほどしか画像で確認できないんですよ!
加えて地域変異やらまだ見ぬ新種やらが盛り沢山・・・。共生関係なんかもまだまだ知らないことばかりです。
やっぱりアリダマ面白いんだよなぁ。いつか他の植物愛好会みたいにアリ植物愛好会でも作って大人数で語りあったりできるのが夢です。



だいぶ話がずれましたがたくさんのことに気付いたイベントでした。
ギリギリ経費も回収できてよかったです。(ということはウン十万円分の植物が無くなっただけ・・・?恐ろしい・・・この体験はプライスレス・・・)


懲りもせず今後も色々なイベントに出店していきますのでまたよろしくお願い致します。
次回は 京都府立植物園 早春の園芸市 です。