アリ植物とは

アリ植物とはアリと共生関係にある植物。
じゃあどう共生関係にあるのか、定義はなんなのかという話。

アリ植物の3つの関係

エライオソーム

まず1つ目のエライオソーム(種枕)。植物の種子についている付着物で、アリが好む餌となっている。アリは餌として巣に持ち帰り、植物はアリによって種子を遠くまで拡散させる仕組み。
この仕組みを持つ植物は約11000種。 片利共生など日和見的な相互作用。

花外蜜腺

2つ目は花外蜜腺。英語ではextrafloral nectar, 略してEFN と表記されることが多い。
言葉からわかる通り花の蜜ではない、その他の葉などの箇所から分泌される蜜。
真珠体と呼ばれるものやアリアカシアの葉に付くベルティアン体も広義で花外蜜腺と言っていいと思う。この蜜を利用してアリなどに植物体を守らせるなどしている。
この仕組みを持つ植物は約4000種。 片利共生など日和見的な相互作用。

ドマティア

3つ目はドマティア。ダニ室と呼ばれるものと同じで、植物自体が空洞を持つ箇所を作り、その中にアリなどを住まわせる。アリ専用のダニ室と言う意味でMyrmecodomatium とも呼ばれる。
植物は住み家を提供し、アリは住み家を守るためにも植物体を守る。さらに排泄物や死骸などを栄養として吸収する機能を持つものや、その植物体でしか巣を作らないなど、強い共生関係を持つものもある。
この仕組みを持つ植物は約700種。 相利共生など義務的な相互作用。

それぞれ簡単に説明するとこんな感じ。
さて、ここで改めてアリ植物とは、と考えると、アリと共生関係にある植物はとても多いことがわかると思う。

その中でもドマティアを持つ植物は熱帯地域にのみ分布しており、アリとの相互関係もより義務的な共生関係となっている。
「アリ植物」と言う言葉の定義は曖昧ではあるが、園芸においてその造形を楽しむと言うことであればドマティアを持つ植物のことをアリ植物と呼ぶべきなのではないかと思う。
Guillaume Chomicki氏の『Phylogenetics and molecular clocks reveal the repeated evolution of ant‐plants after the late Miocene in Africa and the early Miocene in Australasia and the Neotropics』によるとこのMyrmecodomatiumを持つ植物は約700種(約160属50科)ほどあるとされているが、調査を続ければ約1140種あるとも言われている。

アリの多様化の背景には植物の多様化がある。
Veronika E. Mayer氏らの『Current issues in the evolutionary ecology of ant–plant symbioses』 によると、アリは白亜紀後期から多様化したと考えられており、植物は白亜紀初期ごろから花を咲かせる植物(アンギオスペルマム)が多様化し急速に広がった。この花を咲かせる植物(アンギオスペルマム)の拡大により草食性昆虫の増加や植物上の食物資源がより豊富となり、より多くのアリを植物に引きつけ、アリと植物の相互作用の進化の機会を増やしたと考えられている。その結果、アリは植物に集まる草食昆虫を餌として狩りをすると、結果植物の食害は少なくなり、それに目をつけた植物がアリを利用し体を守るように進化したり、種子散布のために種子に絵餌をつけ運ばせたりなど、多くの相互作用を生み出すことになったという。



また、南米と東南アジアのアリと植物の関係には違いがあったりする。
そのあたりなどなど書き始めるとキリがないぐらい膨大なので少しずつ書いていくようにします。

ちょっと脱線したかもしれないですが、アリとの共生関係が強い順としては
エライオソーム < 花外蜜腺 < ドマティア の順です。

花外蜜腺はアリだけと言う訳でもないし、複雑な相利共生関係があるものもあるけど無いものも多いです。
また、南米のチランジアの一部の葉の間にアリが巣を作るのでアリ植物と言われたりしていて、確かに栄養を吸収出来るような構造、生態があるものもあるようですが全てでは無いと思います。
アリと植物の関係はまだまだ詳しく調べられていないものが多く、これら全てを『アリ植物』と呼ぶのは疑問です。そもそも、アリ植物と聞いて思い浮かぶのは食虫植物のようなわかりやすい変わった器官を持った変わった姿の植物と言うイメージになると思うので、混乱しないようにするならば園芸におけるアリ植物とはドマティアを持った植物とすれば良いのかなと思います。

最近ではMonolena が海外でアリ植物とされて販売されて日本にも入って来ていますが、関係について研究されたようなソースがなく、ただ真珠体が出来るからそう言われているような気がします。もちろんその中でも関係性がある種はあるのかもしれないけどわからないですね。

色々調べるとわかるのですが、アリに関わらず植物は多くの生き物と複雑な関係を持ち進化しています。自分はわかりやすく「アリ植物好き」として活動していますが、生物多様性がわかりやすく面白く学べる変わった植物全般が好きです。


最近園芸において『アリ植物』がただの商売の売り文句になっているような気がして気になったので簡単ですが少し書いてみました。
日本語で説明されたネットの記事もなく、調べるのが難しいので言ったもの勝ちにならないように、せめて海外の研究者の論文を自分も勉強がてらここに書いていけたら良いなと思います。

アリ植物展示について御礼と感想

咲くやこの花館と東山植物園でのアリ植物の展示が終了いたしました。
このコロナ禍で、来て欲しくても宣伝していいものかどうかとか色々な想いでいましたが、結果多くの人にとまではいかずとも最低限魅力が伝わる展示ができたのではないかと思います。ご来場いただいた方々本当にありがとうございました。

植物園側から声をかけられたわけでは無いので、地道に色々な植物園にコンタクトを取り、アリ植物のプレゼンをしていきました笑
話し始めると皆さん興味深く話を聞いてくれたし、色々な方を紹介してくれたり、面白い良い展示が出来るよう協力してくれて本当に感謝感謝です。
結果多くの人に協力いただいて開催となりました。展示に際してご協力いただいた方々、ありがとうございました。

初めての植物園での展示協力という形でしたが、短い時間の中でやりとりして調整していただいてとても助かり勉強にもなりました。
今後も引き続き植物園での展示協力等をしていきます。その中で植物園に少しでも多くのアリ植物を提供していってアリ植物展が夏の食虫植物展と同じように、全国で当たり前に毎年開催されるようにしていきたいです。
現状では自分のコレクションを運んで持っていくしかないのですが、ほぼほぼ一点しかなく、尚且つ展示・移動によるダメージもあるので悩ましいのですが、ここはやはりリスクを承知で少しでも多くの方々に魅力や情報を伝えていくべきだなと感じています。

アリ植物はまだまだ流通が少なく、栽培方法もまだよくわからないものがほとんど。しかし最近では自分を通してメディアに紹介される機会も多くなっているし、より認知度が上がる前に少しでも多くの情報を発信し、物を提供し、これから興味を持ってくれる人のために基盤をなんとか作っていきたいです。
今のところ普及も生産も情報発信もほぼ自分一人でやっているようなものなのでなかなか時間かかってしまうけど、ここまできたらなんとか頑張りたいです。ただ少し弱音を吐くと、ここのところのコロナ禍と展示と農場立ち上げの設備投資諸々でお金がなくて負のスパイラルに陥りかけていてどうしようかなっていう感じ。
出来ればバイトとか雇えたら生産量も増えるんでしょうけど、モノも輸入しづらいし、売れば増殖かけれるものが減るし、高額なもの欲しがる趣味家もまだ少ないし…
まぁそんな感じで若干落ちてはいるんですが考えてないわけではないので未来の自分がなんとかしてくれるでしょう。




……ちょっとネガティブになってすみません笑


今回の展示で色々嬉しいことや気付いたことが多くありました。
咲くやこの花館での展示は食虫植物展の中での特別展示でしたが、その圧倒的なまでの食虫人気には驚きました。
興味を持つ部分ってどこなんだろうと思って来場者の反応を見てみると、実際に虫を食べている動画や痕跡かなと感じました。アリ植物に置き換えるとアリが住んでいる様子とかですね。確かにこの部分ってあんまり紹介できていない気がするなと。
逆にアリ植物の方で言うと今回ミルメコディアの塊茎の断面を見せる展示をしましたが、それが一番よく食いついて見てくれていましたね。
自分も色々紹介してきたつもりでしたが、今回の展示の反省を生かして、より面白くわかりやすい展示もできるよう頑張りたいなと思いました。
東山植物園での展示は愛知県の再びの緊急事態宣言と猛暑とあり、来場者は少なめでしたが、植物園の常連のお客さんからはこれからも引き続き展示してほしいと言う声を多くいただきました。

どちらの展示でも、これだけの種類を初めて見たとか、そもそもこんな植物があるなんて知らなかった、面白いと言う声を多くいただきました。即売会では子供の実験用に苗を買って行ったり。
こういうことって結局消耗品みたいになってしまうので嫌がる人が多いと思うんですが、自分は嬉しかったですね。多く生産された普及種などは手の届きやすい価格で気軽に買えて、色々興味を持ってもらうきっかけになってもらいたい。食虫植物が今これだけ有名なのもホームセンターなどで毎夏出てくるようになった安価な生産品の影響が大きいでしょう。
アリ植物が安定してそうなるにはどれだけかかるかわからないですが、将来的にそうなればいいなと思います。


このHPも情報発信の場として作ったのですが色々遅れてて申し訳ないです。
まだバタバタですがこれからも長い目で見守っていただけたらと思います。